予告編を見て面白そうだと思いネットでの評判も上々のようだったので見に行きました。「灼熱の魂」のドゥニヴィルヌーヴ監督ということもあり、濃密なドラマを期待していました。
ですが、、、んー、どうなのかなぁ。ワタクシは消化不良に感じました。
感謝祭の日、近所の友人家族同士でお祝いをしていたところ、ドーヴァー家とパーチ家のそれぞれの末娘たちがパーチ家からドーヴァー家に一緒に戻ったまま忽然と姿を消した。その前に不審なキャンピングカーが近所に停まっており、すぐにその車の持ち主アレックスジョーンズポールダノが警察に拘束されるが、彼は10歳ほどの知能しかなく、物的証拠は何も出ずすぐに釈放されてしまう。
アレックスが釈放される警察署の前でアレックスに掴みかかったドーヴァー家の父親ケラーヒュージャックマンにアレックスは「僕が一緒にいたときには泣かなかったよ」と聞かされ、アレックスが犯人だと確信したケラーは、こっそりアレックスを拉致し今は無人の実家に監禁し、拷問にかけ娘たちの居場所を聞き出そうとしていた。パーチ家の父フランクリンテレンスハワードも監禁場所に連れて行ったが、フランクリンはケラーのやり方に賛成はできなかったが、ケラーを警察に突き出すこともできなかった。
このケラーという人物像は、最初の数分で見事に説明されていると思う。息子に鹿撃ちを教え、信心深く、常に非常事態に備えよと息子に説くアメリカのタフな父親。こういう人物は頼もしい反面ちょっとひとりよがり的なところもあるのだろう。そんな父親が娘を誘拐され、あのような行動に出るのはそんなに不自然なことではないと感じるし、物語の運びとしてこれがどのような帰結を迎えるのか導入部としては強烈に観客を惹きつける。
が、しかしだ、、、
一方の警察の捜査っていうのがなぁ、、、描かれ方があまりにも生ぬるい。担当のロキ刑事ジェイクギレンホールは非常に優秀な刑事という設定なのだけど、具体的な捜査としてはネットでポチポチ何かを調べているシーンしかほとんど映らない。少女たちが失踪した時点で誘拐かどうかはまだ分からないけど、少女の失踪事件なんて初動捜査がものすごく重要になるというのは常識だと思うのだけど、森林を捜索する以外何かしている様子が映されない。逆探知の用意とかしないの?しかも、捜査に当たっているのが制服警官以外ではロキだけっぽく見えてそれも不自然。最低でもロキにはパートナーがいると思うし、幼い少女の失踪ならチームが組まれないかな?アレックスの車から何一つ証拠が出なかったのもおかしいし、アレックスの家の捜索も非常に手ぬるい感じがしたなぁ。
それで、何?あの牧師に連続殺人を告白に来て、牧師に殺された男?あれが伏線ってのもなぁ。連続殺人を告白して殺された犯人ならもっと詳しく遺体を調べて身元とか割り出さない?すぐに例の犯人の夫だと分かるかどうかは別としてもいまいちその辺の突っ込みも甘いような…
警察の動きと犯人の動きとかそういう刑事ドラマ的な楽しみではなく、少女を誘拐された(と思っている)父親の行動を追うドラマだとして見るべきということかな。ヒュージャックマンの演技はすごかったと思うけど。アレックス拉致→拷問、拷問、拷問の一本やりでいまいちどの方向にも進展しない。アレックスが「僕はアレックスじゃない」とか言ってたけど、声が小さくてケラーには届かず…
ケラーの信心深さというのが彼の心情にリンクして語られています。犯人のほうの信心についても語られるので宗教的な一面を持った物語だとは思うのですが、信じる方も信じない方もむごいことをしているのがなんか皮肉だったな。それが物語の核?途中で捕まる犯人モドキと犯人の共通点に「ヘビ」があったけど、あれもキリスト教における「ヘビ」が象徴するものと関連があるのかな。よく分からなかったけど。
シーンシーンがブツ切りされるような編集方法は「灼熱の魂」でもそうだったな。この監督の特徴なのか。
最初にも書いたようにネットでの評判は良いので、ワタクシが監督の意図を拾いきれなかっただけかもしれません。
↧
プリズナーズ
↧