「月に囚われた男」のダンカンジョーンズ監督の作品。アメリカで公開されたときから気になっていました。
冒頭の8分間。シカゴ行きの列車の中で目が覚めたスティーブンス大尉ジェイクギレンホール。目の前には自分に話しかける女性クリスティーナミシェルモナハン。彼女にはまったく見覚えがない。この列車にも見覚えがないし、クリスティーナは自分のことをショーンと呼ぶが誰のことが分からない。トイレに行って鏡を見ると自分の知らない男が鏡に映っていた。戸惑っているうちに列車はシカゴに着く。そこで起こる爆発事故。
変なカプセルの中で目覚めたスティーブンス大尉。画面を通して話しかけてくるグッドウィン大尉ヴェラファーミガ。この女性にも見覚えがないが、「私の名前を思い出しなさい」と変な暗号めいた文章を読むグッドウィン大尉。それをぼーっと聞いているうち彼女がグッドウィン大尉だということを思い出した。だが、彼にはなぜ自分がカプセルの中にいて何をさせられているのか分からない。グッドウィン大尉に質問をすると後ろでラトレッジ博士ジェフリーライトという男がグッドウィン大尉に指示していた。「爆破犯を探せ」と言われ訳も分からないままさっきの列車に引き戻されるスティーブンス大尉。
2回目の8分間から目が覚めたとき、やっとラトレッジ博士の説明を聞くことができた。死者の脳には最後の8分間の記憶が残されているという。その脳波に入り込んで真相を究明するのがスティーブンス大尉の任務。爆破犯は列車の次にシカゴ市内で爆発を起こすと予告している。列車の乗客の最期の8分間に入り、爆破犯を発見し次の爆破を止めるというのだ。
やっと自分の任務をきちんと理解したスティーブンス大尉。そこから彼の「ミッション:8ミニッツ」が本格的に始まる。
前作の「月に囚われた男」でも組織に利用される人を描いたダンカンジョーンズ。今回もSF的な話で組織に利用される男を描いているが、前作よりずっとアクション的な要素が多く、展開も動きがあってとっつきやすい。
何度もショーンという男性の8分間を繰り返すというのは一見退屈になりそうな気もするが、スティーブンス大尉の行動がそれぞれの8分間で違ってくるし、帰ってくるたびにグッドウィン大尉やラトレッジ博士とのやりとりも進行していくので、少しずつスティーブンス大尉にすら隠された極秘実験の全貌が明らかになっていくという展開もすごくうまい。少しずつスティーブンス大尉とクリスティーナの距離も縮まり、グッドウィン大尉との関係も変わっていく。スティーブンス大尉の置かれた状況や家族との関係なども少しずつ明かされていって心揺さぶられる展開になっていた。
この極秘実験についてなのですが、スティーブンス大尉の8分間の行動を見ていると、彼が自分から進んで実験に参加したのではないというところが物語のキーですね。もしくは、同意していたことを忘れているかですが。彼がただただ忠実にこの任務をこなしていたら、このようなドラマは生まれなかったわけで。
スティーブンス大尉の働きのおかげで現実世界で犯人を逮捕できたあとも彼はグッドウィン大尉にもう一度仮想現実の世界に行かせてくれと懇願します。もう一度行けば乗客を救うことができると。たとえその中で乗客を救ったとしても現実世界ではすでに死んでいる人たちであり、何も変わらないのですが、いまの彼には仮想現実がすべてなわけである。この辺は少し哲学的な感じがしますね。結局“現実ってなんなんだ?”みたいなところで。ここでスティーブンス大尉に同情したグッドウィン大尉の行動にも観客は共感するし、スティーブンス大尉の最後の列車の中での行動に感動します。
「映画通ほどだまされる」と宣伝しているラストなんですが、あれはちょっとワタクシは余計だと感じました。あれはあれで面白いと思うし、好きだと言う人もいると思うんですが、その前のシークエンスで終わった方が良かったような気がするなぁ。あのラストのほうがSF的な面白さとか希望があるのかもしれないんだけど、哲学的なファンタジーとしてというのと、スティーブンス大尉とグッドウィン大尉の友情の結果というところで終わって欲しかったな。そして、スティーブンス大尉からグッドウィン大尉へのメールの内容は感謝の言葉というもので締めくくってくれたら最後の乗客の笑顔とともに感動するSF作品になったと思います。まぁ、でもこの辺りは好みということでこの作品の評価が格段に下がったとかそういうことではありません。
オマケ軍隊は嫌いなのですが、軍服姿のヴェラファーミガはめっちゃセクシーでした。
映画」もいいけど「犬」も好き。という方はこちらもヨロシクです。我が家の犬日記「トラが3びき。+ぶち。」