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Channel: シネマ日記
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瞳は静かに

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1970年代軍事政権下のアルゼンチン。お母さんノラセシリアフォントを交通事故で亡くしたアンドレスコンラッドバレンスエラはお兄ちゃんラウタロプッチアと一緒におばあちゃんノルマアレアンドロの家で離婚したお父さんファビオオアステと暮らすことになった。

お父さんたちはお母さんと子どもたちが住んでいた家を売り、お母さんの荷物はなぜか焼き払ってしまう。8歳のアンドレスにはよく意味が分からないが大人たちは何かを隠しているような感じがする。母の家に行っても怒られるし、友達と遊んでいてボールが入ってしまった敷地に勝手に入ったことくらいでめちゃくちゃに怒られた。大人たちはお昼になるとアンドレスにお昼寝(シエスタ)をさせて何か秘密の話をしようとしている。

お母さんは反体制派の運動に手を貸していて、軍事政権下のアルゼンチンではそれが見つかったら大変なこと。一見普通ののどかな街角にも秘密警察のアジトがある。大人たちはいつも秘密警察の顔色を窺いながら、自分たちが疑われることのないよう細心の注意を払って生活していた。

そんなことは8歳のアンドレスには分かるはずもない。それでもやはりそのように暮らしいてる大人の姿が子供に与える影響というのは計り知れない。少しずつ純粋な8歳の少年の心を侵食していく大人の生き方。そして、真夜中に秘密警察が反体制派を乱暴に連行していく姿を目撃してしまったアンドレス。一緒に見ていたはずのおばあちゃんに「あれは夢よ」と言われ増す不信感。その結果できあがってしまう恐ろしい子供。

映画の前半でお母さんと楽しそうに歌い踊っていたあどけないアンドレスの瞳が、ラストシーンでこちらをゾッとさせるようなまなざしに変わっている。この「瞳」で選んだとダニエルブスタマンテ監督が言うだけあって、アンドレスを演じるコンラッドバレンスエラの瞳が素晴らしい。演技はほとんど経験がないという彼だけど、あのまなざしができる自然な演技力が備わっている。ポスターを見ている段階ではずっと女の子と思っていたほど可愛らしい顔をしているし、これからの成長が非常に楽しみな子役だ。

映画のストーリーの中では、特に軍事政権について何も語られないし説明もないので、まったく背景を知らずに見るとなんのこっちゃ分からんってことになると思いますので少し事前に調べてからご覧になってください。



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