パキスタン移民イギリス籍、イギリス在住の青年アシフアルファーンウスマーンはお見合いのためにパキスタンへ行き、結婚を決め、結婚式をするために友人たちをイギリスからパキスタンに呼んだ。ローヘルファルハドハールーン、シャフィクリズワーンアフマド、ムニールワカールスィッディキーの3人は一緒にイギリスからパキスタンへと向かう。
結婚式まで時間のあった彼らは、パキスタンの隣国アフガニスタンが米軍の空爆を受けている現実を実際に見に行こうとアフガニスタンに行き、そこで北部同盟とタリバーンの戦闘に巻き込まれムニールは行方不明になり、他のメンバーはアメリカ軍に捕らえられアルカイダの関係者だと見られ尋問を受け、グアンタナモに送られ拷問される。
本物のアシフ、ローヘル、シャフィクの証言インタビューと役者たちによる再現フィルムが交互に流れるセミドキュメンタリーになった作品。最初はどの役者が誰に当たるのかが把握しにくいが、特にその特定ができなくても筋を追っていく分には支障はない。
彼らがアメリカ軍に捕らえられてからの恐怖は計り知れない。アメリカ軍の兵士たちは毎日“訓練”と称して彼らを引きずり回し、食べ物を投げ渡す。グアンタナモに移送になってからはキューバの燦々とした太陽の当たる庭でケージに入れられ昼間は酷暑に耐え夜は寒さに耐えなければならなかった。彼らは一人ずつ尋問に連れて行かれ、縛られ殴られ大声で怒鳴られた。イギリス領事館の職員だという者やイギリス軍兵士だという者が現れ彼らの話を引き出そうとするが、ただ結婚式に来たイギリス人ということ以外、彼らが言えることは何もなかった。
暗闇の中、しゃがんだ体勢で手錠を床に留められ、大音量でヘビメタを流されディスコのような強烈な光が点滅する。そんな拷問を数時間続けられ、あとは独房に閉じ込められる。行ってもいないビンラディンの演説を聞きに行ったと写真を見せられお前が写っていると脅される。その日はイギリスでバイトしていたと言っているのだから、調べればすぐに分かるはずなのに。
彼らは2001年の9月に捕らえられイギリスに戻れたのはなんと2004年の3月だった。一人がそのビンラディンの演説の日にイギリスで警察に捕まっていたことが分かったのだ。解放してからのアメリカ軍兵士の態度もひどいものだった。彼らは一言も謝りもせず、最後まで高圧的な態度でアシフたちに接していた。彼らが解放されてから分かったのは、イギリス領事館の職員とかイギリス軍の兵士だとか言っていた人たちもアメリカ軍の兵士がそのふりをしていただけだったということだった。
兵士たちに抱えられて引きずり回される姿や、グアンタナモに移送するときの目隠しとヘッドホンの姿、大音量で音楽を流す手法など、いままでCIA絡みの映画などでよく目にしていた光景だった。いままで見ていた映画などはCIAが主役の話だから、その結果テロの重要な情報が分かるというパターンのものだったけど、「ゼロダークサーティ」や「HOMELAND」の陰でアシフたちのような目に遭った人たちがどれほどいただろうか。でたらめの証拠に「これはお前だろ。お前だ!お前だ!お前だ!」とやる尋問官の姿には吐き気さえ覚えた。
グアンタナモ収容所に関してはアムネスティからも人権侵害を指摘され、オバマ大統領は閉鎖を目指すとかずっと言ってるけど、いまだに閉鎖はされていない。最近もここからの釈放者の16.6%がテロ活動に戻っているという発表をアメリカ政府がしていたけど、何%が無実の罪で捕まった人たちだったという発表は一切ないね。当然と言えば当然だけど。
しかしブッシュを筆頭に当時の政府の高官たちはグアンタナモに捕らえられた者の多くが無実であることは知っていたという発表もある。たとえ無実の人を犠牲にしたとしてもたった数人のテロリストを捕らえられればそれでいいという考えのもと、彼の政策は進んで行ったのだ。無実の人たちを数百人、拷問してでもテロリストが捕まるならそれでいい。無実の人っつったってどうせイスラム教徒のアラブ人なんだから、痛くもかゆくもない。「テロとの戦い」という大義名分の前ではすべてが正当化された。そんな図式からは世界はもう抜け出さないといけない。