妻エミリージュリアンムーアとレストランで食事中いきなり妻からなんの前触れもなく離婚を告げられたキャルスティーヴカレル。妻は職場の同僚デヴィッドケヴィンベーコンと浮気をしたと言う。
平凡でも幸せな人生と思っていたキャルは、一気にどん底へ突き落とされる。家を出て一人で暮らし始めたキャル。毎晩バーに飲みに行くが一人でぶちぶちと妻と浮気相手の愚痴を言うばかり。そんなキャルを見るに見かねて呼び止めたのがジェイコブライアンゴスリング。夜な夜なこのバーにやって来ては必ず女の子をお持ち帰りしているナンパ師。ジェイコブはキャルがこんなんだから奥さんが逃げていくんだとキャルを変身させようとする。
ジェイコブの指南を受けて服を買い、髪型を変え、ジェイコブに付いてナンパのやり方を覚えるキャル。スティーブジョブスでもないくせに、その歳でスニーカーなんか履くなとか、サイズの大きいジャケットを着るなとか、ダサい財布を持つなとか、ジェイコブのアドバイスがなかなか面白い。
キャルもある日、そのバーで知り合ったケイトマリサトメイのお持ち帰りに成功してからは自信がついたのか次々に女の子を落とすようになる。しかし、やはりキャルの心の中には妻エミリーがいて、エミリーを取り戻したいと願っていた。
妻エミリーのほうは浮気相手のデヴィッドは何かと気にかけてくれるものの、デヴィッドと付き合う気持ちは薄く、自分から離婚を言い出したわりにはまだキャルに未練があるような感じにも思える。
二人の子供で13歳のロビージョナボボは下の妹とともにベビーシッターを雇われていたが、そのベビーシッターのジェシカアナリーティプトン、17歳に恋していた。そして、そのジェシカはなんとキャルに恋心を持っていた。
一方ジェイコブのナンパは順調そのものだったが、ある日以前声をかけたが振られたハンナエマストーンが恋人に振られ酔っぱらってバーにやってきて自分からジェイコブにお持ち帰りを迫った。戸惑いながらもジェイコブはハンナをお持ち帰りするが、ついついハンナとは話が弾んでしまいその夜は話をしただけで眠りこけてしまう。いままでこんな気持ちになったことのなかったジェイコブはハンナに会って初めて恋というものを知る。
これだけ色んな要素を詰め込んで、全然バタバタにならず整然とストーリーは進んでいき、その中でも途中途中にきちんと笑いをはさんでくるというとても高度なコメディー。キャルの変身ぶりを見るのも楽しいし、相変わらずジュリアンムーアはカッコよく、キャルの言う「セクシーとキュートの融合」という形容詞がピッタリで、それでいてミドルエイジクライシスをきちんと表現している。ジェイコブを演じるライアンゴスリングは若手でありながら複雑な役を演じることが多い役者さんなので、その彼がこんな軽妙な役を演じられるとは思わなかった。さすが、今年ブラッドリークーパーの次にセクシーな男性に選ばれただけあって、劇中でもハンナに「フォトショで修正したあとなの?」と言われる肉体美を披露していた。
そして、誰よりもいい味を出しているのが13歳の少年ロビー。年上の女性に恋して苦しい気持ちを授業で「asshole」を連発することで発散し、「緋文字」にならって自分の胸にジェシカの「J」を書きそれを校庭で披露して見せるなど、ちょっとぶっ飛んだことをやってくれるロビー。まだまだ子供なんだけど、どこか達観したようなところもあり、両親の危機を生あたたかくも、大きな愛を持って見つめている。彼を見ているとキャルとエミリーは良い両親なんだろうなということが分かります。授業で「asshole」を連発したときはエミリーも校長先生に呼び出されたけど、その行動をエミリー自身は気に入っていたようで、クールなお母さんという感じがよく出ていた。
それにしても、冴えない中年男がカッコ良くなって女性を虜にし妻をも取戻し、遊び人の若い男が本当の愛に目覚めるというのは、特に目新しい設定ではないけれども、それでも面白い話だなぁと思って見ていたら、なんと、最後にビックリのもうひと展開が待っていて、想像だにしていなかったワタクシは本当に驚いた。
ここから完全にネタバレします。
確かに結婚生活25年とか言ってるわりには長男が13歳って、子供小さいなぁと思いながら見てたんですよ。途中途中で「ナナに電話しなきゃ」とかってセリフだけで登場する人の存在も忘れていたわけではないんだけど、ナナってこの夫婦のどちらかのお母さんかなぁって思ってて。
まさか、まさか二人の一人目の子供が25歳のハンナだったなんて。あのジェイコブが恋に落ちたハンナだったなんて!ジェイコブが今から「ハンナのお母さんに挨拶に行くんだ」ってキャルに電話していたけど、それがまさかエミリーのことでそこに父親であるキャルも居合わせることになるなんてねぇ。当然本人たちが一番びっくりしただろうけどね…いやー、これはワタクシやられました。全然予想してなかった。
キャルがジェイコブに怒ってもみ合ってるところに、タイミング悪くジェシカがキャルに贈ろうとした裸の写真が親にバレてジェシカの親がキャルのところに乗り込んできーの、ジェシカの気持ちがその場の全員にバレーの、ロビーも傷つきーの、キャルはジェシカの親に殴られーの、というドタバタに大爆笑しました。こんな大騒ぎが最後に待っているとは!
そりゃジェイコブのあのナンパ師ぶりを見ていたら、キャルがこの交際に賛成するわけないわな。どうすればジェシカの気持ちをキャルが分かってくれるのか。キャルはエミリーを取り戻すことができるのか。ロビーの恋心は?と最後の最後にちゃんとハッピーエンドになるまできちんとずっと楽しませてくれるよくできたお話です。キャルがジェイコブに指南役のときにされたビンタのお返しをするのが最高。これから何回そのネタでいじめるつもりだろうか。しかし、まぁお互いに弱みを握っている者同士だから、この先も仲良くやっていけるでしょう。