沖縄の玉砕現場で、軍からの集団自決命令があったのかなかったのか。2007年、文部科学省は教科書から集団自決の軍命を削除させた。2011年、「大江・岩波集団自決訴訟」で沖縄戦の司令官が集団自決命令を発したとする十分な理由があるとする大江健三郎氏、岩波書店側が勝訴した。この作品は、当時の沖縄県民の証言を通して、当時の様子を明らかにしていく。
それと同時に軍属として朝鮮から沖縄に連れて来られ日本軍とともに戦った人々の証言や、慰安婦として連れて来られた女性たちの目撃証言などを集めている。
あれだけ多くの人が別々の場所で当時直接玉砕命令を耳にしているというのに、どうして軍からの命令はなかったなどと言うことができるのかワタクシには理解できない。あれだけの人数が知らない者同士で別々の場所で口裏を合わせたとでも言うのか。当時を振り返った人々の貴重な証言がここにはある。
自分の戦争体験を話すのがつらいと言う母親に聞くのがつらいという息子。
「生き残った良かった」というおばあ。
学校で学徒隊を編成するため、出頭命令を渡す役割をさせられた子。自分の判断であまり小さい子には渡さないことにしたという反面、自分が渡した子たちの中で戦死してしまった子の母親には向ける顔がないと言う。
家族で自決の覚悟をするが、なかなか子に手をかけられない親。「怖い」と言って子供が逃げ出したために考え直すことができた親。
軍が自決を迫る中、「逃げなさい」と言ってくれた将校。
市民が飢えで苦しむ中、牛をさばいて自分たちだけたらふく食べていた軍人。
壕の奥に自分たちの快適な場所を確保し、そこに慰安婦を囲っていた軍人。
軍属として連行され、ろくに食べる物を与えられず戦争に参加させられた朝鮮人。
慰安婦たちは最後には見捨てられ、見殺しにされた。
すべて書き尽くすことはできない証言がここに詰まっています。こういうドキュメンタリーこそ、学校などで上映会をしてほしいと思うのですが、いまの教育現場ではこういう作品を上映できる状態なのでしょうか?愛国心を教えるという名の下にこういう悲惨な歴史が封印されていくような恐ろしさを感じます。愛国心を教えるなら、実際に起こったことをありのままに教え、その反省に立った上で国を愛することを教えるべきだし、国を愛そうが愛すまいが、戦争をしてはいけないという理念はぶれてはいけないものだと思います。
映画として、決して見やすい構成になっているとは思いません。複数の方のインタビューがとびとびで流され、一人の人の時間がやたらと長かったり、沖縄の人の証言のあとに朝鮮の軍属の話になったりと話しがあちこちに飛ぶ印象があります。映画作品としては正直申し上げて高い評価はできませんが、関係者がどんどん歳を取っていく中、やはりこれだけの膨大な証言を集めた映像ということで非常に価値のある作品だと思います。
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ぬちがふう(命果報)〜玉砕場からの証言
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