1974年のシドニールメット版はテレビで大昔に見た記憶があるのですが、内容は完全に忘れていました。超がつくほどの有名な小説なのに、その内容も全然知らず、ケネスブラナー監督・主演作品はわりと好きなものが多いというのと、ペネロペクルス、ジュディディンチ、ウィレムデフォーその他豪華キャスト目当てで行きました。
ミステリーなので、内容は書かずにおきますが、結論から言うとワタクシはとても楽しむことができました。まずこのメインの事件に入る前の導入部でエルキュールポアロ(ブラナー)が世界的に有名な探偵で、非常に優秀な人だということを端的に示していて、その後のメインの事件に入る部分もとてもスムーズ。
登場人物が多い作品なので、ぼーっとしていると誰が誰だか分からなくなってしまいそうですが、その辺りも少しずつ説明しながら観客に紹介していく手法はさすが。
立ち往生した豪華列車という所謂密室の中で殺人が起こり、一人一人の常客の正体をポアロが暴いていくわけですが、どうしてあんな限られたソースしかない場所でそこまで全部分かるの?と疑問に思う部分もありつつ、ポアロが指し示す事件の真相へ向かっていく疾走感と真相が明らかになったときのカタルシスが心地よい。
ケネスブラナーは古典作品に新しい解釈を加えて映画化するのが得意ですが、今回のポアロはやたらとアグレッシブな気がしました。杖をついている初老の男という感じなのに、被疑者と追いかけっこしてみせたり取り押さえたりするんですから。原作のポアロがどんな人だか知らないので、これが新解釈なのかどうかワタクシははっきりとは知らないのですが。
導入部でポアロは世の中には正義か悪かしかないと言っていましたが、この事件はポアロの人生観を変える出来事として大きな転機になったかもしれません。最後のポアロとハバート夫人ミシェルファイファーの熱演にふと涙が出そうになるとは驚きのミステリーでした。
シドニールメット版ももう一度見たくなりました。