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Channel: シネマ日記
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ドリーム

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これは絶対に見に行くと決めていた作品です。

1960年代、宇宙への有人飛行をソ連と競っていたアメリカ。その輝かしい実績の陰に活躍を隠されていた人々がいた。「Hidden Figures」それが彼女たち、黒人女性の計算係たちだ。人種隔離政策がまかり通っていた時代。彼女たちの西計算室はメインの建物から遥か遠い場所の地下に設けられていた。

天才的な計算頭脳を持つキャサリンタラジP.ヘンソン、管理職的な役割を果たしているのに黒人女性ということで管理職にしてもらえないドロシーオクタヴィアスペンサー、エンジニア志望だが同じく黒人女性ということでエンジニアになれないメアリージャネールモネイ。この3人がお話の中心だが、西計算室には他にもたくさんの黒人女性たちが働いている。

ある日ソ連に先を越されてばかりのアメリカは計算に長けた人物が必要だと、人種を越えてキャサリンを計算室からメインの作戦室へ呼び寄せる。しかし、そこでは白人たちに冷たくあしらわれ、有色人種用のトイレに行くために西計算室までの片道800メートルの道を一日数回往復しなければならず、コーヒーポットも同じものは使わせてもらえない。この部署の誰よりも優秀なのに。そのキャサリンの優秀さがハリソン部長ケヴィンコスナーに買われ、NASAでは人種隔離などやめるよう働きかけてもらえたり少しずつキャサリンにとっての状況は良くなる。

ドロシーは管理職にはしてもらえないが、新しく来たIBMコンピュータの言語を覚えることで新しいポジションをゲットしていく。彼女は自分だけではなく西計算室にいる全員にコンピュータ言語を教え、みながIBMの部屋へ上がれるようになる。キャサリンが毎日苦労してトイレに駆けていた800メートルを今度は西計算室から黒人女性たち全員が隊列をなして行進していく姿が圧巻だった。

最終的にドロシーは管理職に格上げされる。彼女に辞令を渡すのは東計算室(白人女性たちの計算室)の管理職ヴィヴィアンミッチェルキルステンダンスト。ヴィヴィアンがドロシーに「私は偏見などないわ」と言うとドロシーが「知っています。あなたがそう思いこんでいることは」と言うシーンが非常に印象的に胸にどすんと来る。ヴィヴィアンはそう言われて、きちんと考え方を改めた。

エンジニアになるためには白人オンリーの高校で授業を受けないといけないという規則を知ったメアリーは、そこに通えるように裁判所に訴え出る。到底認めてくれそうにない白人男性の裁判官に向かって「今日あなたが出す判決で100年後も意味のあるものはどれ?あなたが“初めて”黒人女性に白人の高校に通う許可を出した裁判官と言われるのよ」と言って説得するシーンもめちゃくちゃ気持ちがいい。

彼女たち3人の私生活もほどよい配分で描かれ、すべてにおいて気持ちのいい作品。もちろん、テーマは重いし、現実にはもっと苦しいこともたくさんあったとは思いますが。映画作品としては素晴らしい出来栄えで、昨年アカデミー賞作品賞にノミネートされた作品の中でワタクシは見たものの中ではこれが一番良かったです。


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