人種、宗教が入り乱れるパリの公立高校。アンヌゲゲン先生アリアンヌアスカリッドのクラスは落ちこぼれがほとんどで学級崩壊状態。教師を20年やってきたゲゲン先生の前ではそれもなんとか抑えられているが、ゲゲン先生が家庭の事情で休んだ日の代理教師の前ではひどかった。そんな態度に怒ったゲゲン先生、何をするのかと思いきやこんな落ちこぼれクラスをとあるコンクールに出場させることにした。
生徒の一人として出演しているアハメッドデュラメが実際に高校時代体験したことを脚本に書いて映画会社に持ち込んだ作品だという。
さて、そのコンクール、テーマは「アウシュビッツの若者と子どもたち」
はぁ?なんだよそれーと反抗してみせるクラスだったが、参加は自由よと言われてなんとなくほとんどが参加することに。
フランスというお国柄、子供のころからナチスの蛮行は学んでいるのかと思いきや高校一年生の彼らはアウシュビッツについてほとんど何も知らないっぽい。むかーしむかしお隣のドイツであった酷いお話でしょ、くらいの感覚らしい。だってフランス人は善良な国民だろ。普段多人種多宗教の地域にいて差別、被差別をひしひしと肌で感じているはずの彼らでさえ、ナチスのことなんて俺らには関係ねぇくらいにしか感じていないようだった。
数班に分かれてさらにテーマを絞り込み研究を始める彼ら。最初は嫌々やらされてる感の彼らもアウシュビッツという現実の重さに次第に真剣になっていく。バラバラだったクラスのみんなとも協力して研究するうちに結束を深めていく。人種的なことでもめていた連中もそんな偏見を軽々と越えていく。
マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール監督の演出と演者たちの瑞々しい演技でドキュメンタリーなんじゃないかと錯覚を起こしそうだ。生徒たちだけではなくて、ゲゲン先生も本物の先生かと思った。アリアンヌアスカリッドという役者さんは「キリマンジャロの雪」という作品で見たことがあったにも関わらず。
最初はひねくれて参加してこなかった子が少しずつ自分から参加し始める姿、実際にアウシュビッツの生存者を呼んで講演してもらったときの生徒たちの涙、「買い物のついでに近くだから虐殺資料館に行くわ」と言っていた女生徒が、「そろそろ買い物に行かなくていいの?」という先生の言葉に「買い物は別の日にします」と被害者の写真に見入る横顔にこちらも胸が熱くなります。
落ちこぼれ高校生たちが与えられたテーマに沿って、どんどん自主的に学んでいこうとする姿勢とそれをまっすぐにサポートする教師の真摯な姿が素晴らしいです。ゲゲン先生は校長先生から「あんな落ちこぼれたちに時間を割かずに、優秀な生徒に割け」と言われますが、それを無視して信念を貫きます。彼らの姿とナチスのユダヤ人他虐殺を学ぶという2つの視点から見ることができる作品です。
彼らの純粋な学ぼうとする姿を日本の歴史修正主義者たちに見習ってもらいたい。