予告編を見て良さそうだなとは思ったのですが、ちょっとベタ過ぎるかなぁというのと、別にサッカーファンでもないのになぁという気持ちでどうしようか迷っていたのですが、見に行くことにしました。
そんなサッカーファンでもないワタクシでも知っているペレのお話。ブラジルのスラム街で育ったペレは類まれなサッカーの才能を持っていた。洗濯物を丸めたボールで裸足でしかプレーしたことなかったけど。学校と靴磨きの仕事の合間に近所の子たちと狭い路地を一度も(手作り)ボールを落とさずにパスを回していく少年たち。その中にペレがいた。
ある日、少年サッカーの大会がありプロチームのスカウトが見に来るというので試合に出るペレと仲間たち。その試合で初めて本物のサッカーボールを蹴った。洗濯物のボールと違ってやたらと飛ぶ。でもすぐにコツを掴んで自分たちのプレーで勝ち上がっていくペレたち。お金持ち集団の本物のサッカー少年チームと決勝と戦い負けてしまうが、スカウトはペレのお父さんセウジョルジに名刺を渡して帰った。
1950年のサッカーワールドカップ決勝で負けてしまったブラジルは自分たちの華麗な個人技サッカーを捨て、ヨーロッパのフォーメーションサッカーを取り入れようとしていた。そんな時代の流れとペレの華麗な個人技は真っ向から対立。プロのチームに入ってからは個人技を封印してヨーロッパ型のサッカーを仕込まれうまくいかない。でもペレを拾ってくれたスカウトはペレの才能を信じ、彼自身のプレーをしていいと背中を押してくれる。
ブラジルの華麗な個人技がブラジルに連れて来られた黒人奴隷の“ジンガ”(のちにカポエイラに派生する)という格闘技から来ているなんてまったく知らなかった。黒人奴隷が解放されてからその格闘技を恐れた白人にカポエイラは禁止され、その動きを生かしたのがサッカーでの個人技だったというのだ。これはサッカーをよく知っている人には常識なのかもしれないけど、ワタクシはまったく知らなかったのでとても感動した。
そして、当時ヨーロッパから南米の国自体が馬鹿にされ、南米のチーム自体も洗練されたヨーロッパに追いつくことを目標としていた中で、ペレがあるがままの姿でチームを優勝に導いたことは、彼らに大きな希望を与えたのだろう。ペレを馬鹿にしヨーロッパ人に憧れていた白人チームメイトのジョゼディエゴボネータが「僕はヨーロッパ人じゃない。ブラジル人なんだ」と自分に誇りを持てるようになるシーンも印象的です。いつの時代もどこの世界でもやっぱりありのままの自分を自分自身が認めるということができれば、人は顔を上げて歩いて行けるのだと思う。それを身を持って示したのがペレだった。
映画そのものの作りが非常に単純で素直。ただただ天才ペレの伝説の誕生を一気に盛り上げる作りになっている。元プロサッカー選手でアドバイスをくれる父、静かに見守りながら応援してくれる母マリアナヌメシュ、対立するライバル、結束を強くしていくチームメイトたち。そしてやはり何よりもブラジル人の魂に染み込んだ“ジンガ”を体現するペレのサッカー。すべてに胸が熱くなりました。息子の活躍をしっかり見つめるお父さんもいいんだけど、息子の活躍を見たいけど怖くて見られないというお母さんの姿に涙が出ました。演出が単純で素直というのは、このペレという偉大な選手を語るのに何も余計なものなど必要ないということなのかもしれません。
世界興行を考えると仕方ないけど、この偉大なペレ伝説の映画が英語だったのはブラジルの人からしてみればもしかして残念ポイントだったのかなーと関係のない日本人としては推測するしかないのですが。
途中で本物のペレがカメオ出演しているシーンがあって嬉しくなりました。きっとカメオ出演してるだろうと思っていたのですが、かなり分かりやすい形で出てくれていました。海外の映画館なら大きな歓声が挙がったかもしれないな。
ペレが打ちたてた数々の記録はいまだに破られていないものが多いらしいのだけど、最後に1試合でヘディングで5ゴールを決めたのはペレのお父さんだけというテロップが出て、お父さんへの敬意にさらに感動しました。
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ペレ~伝説の誕生
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