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Channel: シネマ日記
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セッションズ

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みなさま、明けましておめでとうございます。
本年も当ブログをよろしくお願いいたします。


さて、新年1本目ですが、この休み期間中に映画館で見たのはこの1本だけです。


ヘレンハントがアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたことで注目していた作品でした。一日1回だけの上映ということで立ち見が出ていました。

子供の頃ポリオを患い首から下が動かせないマークオブライエンジョンホークスは一日の大半を鉄の肺と呼ばれる呼吸装置の中に入って過ごすが一日数時間ならヘルパーさんの手を借りて外出することができた。彼は重度の障害を抱えつつも大学を卒業し、ジャーナリスト、詩人として本を執筆していた。

そんなマークがアマンダアニカマークスというヘルパーに恋をするが振られてしまう。アマンダはマークを好きではいてくれていたがロマンスの相手としては見てくれていなかった。その後障害者の性についての記事を依頼されたマークは他の障害者の性体験にショックを受ける。そんな一連の出来事をきっかけにマークはセックスセラピーを受けることに。障害者センターで専門のセラピスト・シェリル(ハント)を紹介してもらう。マークは38歳だが当然童貞で、それどころか自分の性器さえ見たことがなかった。彼にとってはものすごく大変な冒険への旅立ちである。

マークオブライエンは実在の人物でこの物語は彼の本を原作としているが、このシェリルという女性も実在していて彼女はsex surrogateと呼ばれる職業についている。sex surrogateとは障害者、健常者に関わらず性生活が困難な人に医療的見地からセラピーを行い、実際に性行為まで導くセラピストである。お金をもらってセックスをする。売春婦とどう違うのか?と考える人がたくさんいるだろうけど、あくまでもセラピストの立場で行為まで導き、特定の「客」を持たず一定回数のセラピーを終えれば、その関係は終わる。患者がそれをきっかけに実際に性生活を営めるようになることを目指すのが彼女の職業なのです。これはここで説明するよりこの作品を見てもらえば分かると思います。

このsex surrogateを演じるヘレンハントがとても自然で素晴らしいです。当然裸になりながら、ごく真面目にではありますが赤裸々にセックスについて語らなくてはならないし、ほとんど動くことのできないマークを相手にセックスシーンを演じなくてはなりません。それをさらっと演じるヘレンハントってすごいなぁ。これまでも自然体がウリみたいなところのある女優さんでしたが、この役を自然体でさらっと演じているように見せる演技力って驚異的だと思います。残念ながらオスカーはアンハサウェイに行っちゃいましたけどねー。まー、アンも熱演だったから仕方ないか。

マークオブライエンを演じたジョンホークスも高い評価を受けていますね。首しか動かせないという難しい役ですし、こういう役は良い評価を受けやすいだろうとは思いますが、マークオブライエンという愛すべき存在を嫌味なく演じているところが素晴らしかったです。

主役の2人以外にもこの作品は脇役がみな素晴らしかったです。セラピーとは言え、お金を払ってセックスをするということがカトリックの教えに照らしてどうなのかという疑問を抱いたマークが相談に行くブレンダン神父を演じたウィリアムH.メイシーも良かった。今まで見た彼の役の中で一番好きな役だなぁ。彼は神父であり、カトリックの縛りを受けながらも友人としてマークにアドバイスをしてくれるという温かい心の持ち主でした。

マークのヘルパーを演じたムーンブラッドグッドも良かったですね。もう一人の男性ヘルパーさんも2人ともこのセックスセラピーのことをとてもクールに受け止めていて、恥ずかしがったり怖がったりするマークの背中を押してくれる存在でした。sex surrogateのシェリルの仕事ぶりは優秀でしたが、マークの精神的成長にはこの3人の力も大きかったと思います。

障害者の性というものがテーマでsex surrogateなる驚きの職業が登場する作品なので、ぎょっとする方もいるかもしれませんが、マークの知性のおかげで笑えるシーンも多いし、心温まるヒューマンドラマに仕上がっています。ワタクシはどうしてもマークよりもシェリルのほうに興味が湧いてしまって、彼女の夫との関係とかもうちょっと深く見たかったなぁと思ってしまったのですが、主役はあくまでもマークということでマークの人生が語られているお話なのでシェリルのことはまた彼女のウェブサイトなどでこれから見ようと思います。

この作品が日本ではR18指定になってしまったことは大変残念に思います。セックスをテーマとしたお話ではありますが、人生において大切なことを語っている作品ですし、猥褻なんてことは全然ありません。R15で十分だと思うのですがねぇ。


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